どさにっき 〜2017年9月中旬〜

by やまや
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2017年9月19日(火)

IKEA の家具を買ってはいけない

_ とつぜんですが、引っ越しました。

_ 前の部屋もそこそこ広さはあったけど、今度はもっと広い。物置専用の部屋とかあるよすげー。これまで使ってた家具はひとり暮らしをはじめた学生のころに買った安物なんで、広くなったことだしこれを機にぜんぶ買い替えた。その買い替えを通して得られた知見が「日本人は IKEA の家具を買ってはいけない」ということ。IKEA ってよくみんな褒めそやしてるけど、店舗は少なくて気軽に行ける人ばっかりじゃないはずで、みんな実物を見ずに語ってないですかね。自分の場合、引っ越し前の家から車で15分、電車なら3駅という近所に IKEA があったので今回の引っ越しでは何度となく通って実物を見て検討できたけど、そうでなければヤバいものに手を出して失敗するところだった。

_ IKEA 家具のダメな点としてよく言われているのが、組み立て家具だけど解体する前提では作られておらず、解体作業中に壊れたり、うまく解体できたとしても再組み立てすると強度に問題があることが多くて引っ越し屋に嫌がられるということ。でも伝聞なので自分は知らない。しかし、搬出を一切考えなくてよいのであれば、ドアやら階段やら廊下やらが狭くて部屋への搬入が困難な大型家具でも、板材レベルまで分解されてるからパーツとして持ち込めるというのはむしろ絶大なメリットといえる。支障なく搬出できるかどうか以前に、まず搬入できなければまったく意味がないわけだから。しかも製品には完成品のサイズだけでなく、梱包サイズも明記されてるので搬入可能かどうかの事前検討も容易ですげーありがたい。ほんとうにマズい点はそんなところではない。

_ IKEA は海外企業であり、海外で設計された家具をそのまま日本で売ってる。i18n だが l10n されていない。イラストだけで文字がない組み立て説明書は l10n されてないわかりやすい例だけど、家具自体も l10n されていない。たとえば組み立てに使う工具も通常のプラスドライバー(フィリップス)じゃなくて ポジドライブという日本ではあまり流通していない規格。とはいえ、入手不可能なわけではないし、IKEA 店舗でも販売してるのでこれに関してはそれほど困らない。

_ IKEA の家具を買っていけないのは、体格の小さい日本人、あるいは狭くて小さい日本の住宅事情をまったく考えてないから。使い勝手に直結する重要な部分を l10n してない。IKEA にかぎらず、家具ってものは店頭の広い展示スペースで見るとそれほど大きく感じなくても、それを実際に部屋の中に入れると一転して巨大になるものである。IKEA の家具はそれがさらにひとまわり大きい。

_ たとえばダイニング用のテーブルの高さと椅子の座面高は、国産家具だとそれぞれ70cm、43cmぐらいが標準的。しかし IKEA ではそれぞれ 74cm、45cmであり、一般的な日本人には椅子が高めに感じる(が、店で試しに座ってみるときは家と違って靴を履いてる分だけ下腿高が高くなってるので気づきにくい)。だからといって椅子をニトリにしてテーブルだけ IKEA にする、とかやっちゃうと高さが合わなくて使いづらい。

_ IKEA で買っていけない最たるものがベッド。まずマットレスのサイズが JIS S 1102で規格化されていて(シングルなら 98cm x 195cm)、ベッドフレームはこのサイズに合うように作られる。しかし IKEA が JIS なんてローカル規格に配慮するわけがなく、同じシングルと称しながら 90cm x 200cmとサイズがまったく違う。なので、ベッド本体は IKEA で買うけどマットレスは専門メーカーのもので、ということができない。シーツなど定期的に買い替える必要のある消耗品も適合するサイズのものは IKEA にしか売っておらず、将来に渡って IKEA に縛られることになる。なお、JIS にはロングベッド(205cm)の規格もあるがほとんど流通しておらず、消耗品も激レアなので万が一売られてるのを見つけても同じ理由で買ってはいけない。一方、敷布団は長さ 210cm のロングサイズでも容易に入手できるので(っていうか標準サイズより多そう)、JIS 規格ベッドの 195cm を窮屈に感じる高身長の人なら布団がおすすめ。

_ で、自分の場合、背が高い方なので、IKEA の大きめサイズはむしろありがたかったりする。IKEA なんて海外ブランドをありがたがるつまんない品性の持ち主のためのものだよね、と思ってたけど、このサイズの違いに気がついた瞬間、自分の中で IKEA の評価が逆に急上昇した。自分の体格に合う家具が特注せずに手に入るなんて! 同居人の体格を考えなくていいひとり暮らしだし、どうせ部屋余ってるし、大きいことは自分の場合マイナスにはならない。一般的な日本人は IKEA の家具を買ってはいけないけど、おれは IKEA で買う。IKEA だいすき。ベッドは買わないけど。

_ サイズ以外の観点では、地震対策。国産メーカーの収納家具、とくに割れ物を多く収納する食器棚は、揺れてると扉や引き出しが自動でロックされて中のものが飛び出してこない 仕組みになってるものが多い。地震が多い日本ではあった方がいいけど、IKEA の収納家具に耐震ラッチつきのものはない(ごく一部にオプション扱いで存在する模様)。国産でも安いものにはなかったりするけど。なお、後付けできる耐震ラッチがそのへんのホムセンで売られてるので、まったくどうにもならんというわけではない。

_ IKEA は床置きではなく壁付けの家具がやたら充実してる。国産品ではせいぜい小さな棚ぐらいだけど、IKEA はそこそこ大きな収納家具でもあたりまえのように壁面設置用治具が同梱されてたり別売りされてたりする。 台所用の水切りカゴにすら壁付け治具が同梱されてるんだぜ。高いところに設置するだけでなく、床置きのように見えて実は床からほんの10cmぐらい浮かせて壁付けにしているような例もカタログにいくつか載ってる。が、日本の一般的な一戸建てやマンションの壁に使われる石膏ボードは脆く、壁面収納を固定できるような強度はない。うまいこと間柱の間隔に合えば、あるいは石膏ボード専用のアンカーを壁に打ち込めばそれでも設置はできるけど、かなり手間だし、原状回復を求められる賃貸住宅では不可能。見栄えはいいけど、ほんとに壁面設置してる人っているんですかね。まあ、床置き家具でも地震での転倒防止のためには壁固定するべきなんで、それ考えたら賃貸は壁付け不可ってのはおかしいんだけどな。

_ そして最後に重要な点。IKEA にはコタツがない。


2017年9月20日(水)

IKEA の家具を組み立ててみる

_ ということで、 IKEA を dis ったら次は実際に IKEA 家具を組み立ててみましょう。

_ 新居は部屋は広いんだけど、あまり大きな家具は玄関を通った後の途中の角を曲がりきれずに入らんのです。玄関からではなくベランダからの搬入ならけっこう大きなものでも入るはずだけど、吊り作業となると作業賃がけっこうな金額になるのでできるだけ避けたい。

_ で、食器棚が欲しいんだけど、国産家具メーカーの既製品はよさげなものが見つからない。設置場所にちゃんと入る幅、かつ電子レンジは置けるけど床下収納をふさがない奥行、かつ自分の身長に合わせて通常よりちょっと高めのもの、かつ玄関から搬入できるサイズ。いくつか家具屋さん見てまわったけどちょうどいいのがないので、やむなく IKEA へ。

_ ふつーは組み立て家具といっても商品1個買えば完成品ができあがる。でも、これから組み立てる ベストーというシステムでは枠組みだけ、扉だけ、棚板だけ、とパーツごとに別売りなので、まず頭の中でしっかり全体像をイメージしてから、それに必要な部品をひとつずつ揃えなきゃいけない。その結果こういう買い物になる。

パーツごとに別売りされてるのでとーぜん梱包もそれぞれ個別で、つまりゴミが大量に出る。完成済みの家具なら配送業者さんが設置までしてくれた上で梱包材は持ち帰ってくれるけど、そんなことしてくれる業者さんもいるはずがない。

_ 設置予定地。

幅は約 125cm で、ここに幅 120cm の棚がちょうどよく収まる。ただし、壁にコンセントがあって、何も考えずに設置するとこれをふさいでしまう。高さは 64cm38cmの棚を上下に連結し、さらに 10cm の脚をつける。

_ 下段の棚から組み立て開始。まずは、いきなり説明書を無視して、背板をカットする。

たいして厚みはないのでノコギリではなくカッターナイフで十分切れる。

_ フレームが完成したら脚をつける。幅 120cm の 真ん中を支える脚を取り付けようとしたら、写真上の穴1個の方は底板にナットが埋めこまれてるけど、下の穴2個の方はナットどころから下穴すら開いてない。

なので、自分でドリルで下穴を開けてビス止めする。なお、受けがナットになってるのは IKEA ではわりと珍しく、直接ビス止めするものが多い。ビスって抜いたり入れ直したりできなくはないが、穴が広がっちゃうので何度も繰り返せない。解体や再組み立てが想定される引っ越しがあるなら IKEA 家具はやめとけ、と言われるのはおそらくこういうこと。

_ 下の棚の枠組みができたところで仮設置。

ぴったり。これで棚の中からコンセントにアクセスできる。

_ の取り付け。 取っ手は自分の好きなところにつけられる。どこでも自由につけられるということは、ネジ止めしようにもどこにも下穴が空いてないということ。なので、ドリルで自分で穴を開けなきゃいけない。

扉の ヒンジは説明書ではまず棚本体側にネジ止めしてから扉を組み付けろ、という手順だけど、先に扉の方にヒンジをつけてから本体に付ける手順の方が作業しやすいと思う。

_ 続いて 引き出し。…のはずだが、梱包が見当たらない。どうやら買い忘れていたらしい。メモしたリストを見返したら、ちゃんとメモには書いてあるのに在庫棚からピックアップしたぞというチェックが入ってないし当然レシートにもない。また後で買ってくるしかないですねー。ということで、いったん下の棚は終了。

_ 上に載せる方の棚。まず天板の裏側に電源タップをビス止め。このビス止めできるタップも IKEA のもの

電源タップのコードを通す部分の背板にも切り欠きを入れる。

ちなみに、コンセントを固定するには本来は電気工事士の資格が必要らしい。ただ、パナソニックの電源タップにもビス止めできる別売り治具があって、こちらは 「仮固定」と表現することでこれを回避しているようだった。なので、これも固定ではなく仮固定であって法的には問題ない(ということにしておく)。

_ 上の棚用の 引き出しというかスライド棚板は忘れず買ってあったので組み付ける。

さっき仮固定した電源タップはこの引き出しの奥。ここは炊飯器と電気ケトル置き場に。

_ あとは上下を接続・固定して、棚板も入れたらとりあえず完成(引き出しがまだないけど)。

高めの方がいいから、と脚をつけたけど、なくてもよかったかも。まあ、高すぎるほどではないし、脚を取るとコンセント避けの背板の切り欠きも広げないといけないのでこのままでいいか。あとは買い忘れていた引き出しと、地震対策もしておきたい(耐震ラッチの取り付けと、電子レンジの落下防止固定)。

_ ほぼ休憩なしで作業して完成までおよそ5時間弱。あとで買い足す引き出しも込みで費用はおよそ4万円。高級感はまったくないけど、安っぽさを感じるほどでもない。このままのサイズでは部屋から出せないけど、分解までしなくても上下分離して脚もはずせばギリギリ部屋から出せるはずなので、もし将来引っ越すことがあったとしても安心。よそで買うよりもずっと安上がりではあるけど、どうしてもという理由がなければ完成品を買ってきた方がいいと思う。めんどくさい。組み立て家具じゃないよね。DIY キットと呼ぶのがふさわしい。

_ そいえば、今回のものとは別のものを IKEA の倉庫でピックアップしてるときに、大きなダイニングテーブルの天板をひっぱり出せなくて往生してた女性を手伝ってあげたことがあったけど、あんなんじゃ組み立て以前に、作業スペースに梱包を運ぶことすらできないよなぁ。ちゃんと組み立てできたんだろうか。


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やまや